クロミウムは筋肉を作るだけでなく、脂肪の減量にも効果が大きいと宣伝され、アメリカでは1千万人以上もの人々がクロミウム・サプリメントのために15億ドル(約1千5百億円)も費やしたとさえ言われているほどだ。しかし、宣伝された内容は非常に不確実なものだった。というのも、確かにそういった作用が得られた実験もあったのだが、逆にまったくそのような作用が得られなかった実験も多いからだ。
 1977年のクロミウムに関する正式な発表によると、チューブで栄養補給せざるを得ない状況に陥っていた女性が、体内に送り込まれた栄養分をほとんど活用することができず、その原因を調べたところ、女性がチューブで摂取していた栄養分にはクロミウムが含まれていないことがわかったのである。つまり、クロミウムが欠乏している環境下では、どれだけ他の栄養素が用意されていたとしても、それらを有効に活用することができないというわけだ。クロミウムが不足すると、例えば血糖値が高いままで維持され、正常に戻らなくなったり、高血脂症(血液中の脂質、例えばコレステロールやトリグリセリド、悪玉コレステロールといわれるLDLなどの量が多い症状)が起きたりしてしまうのだ。さらに、善玉コレステロールといわれるHDLはクロミウム不足の環境下ではレベルが低く、これは健康にとって決していいことではないのである。インスリンはアナボリックホルモンとしても認識されているホルモンだが、クロミウムの欠乏によって血糖値が上昇したまま維持され、その血糖値を下げようと大量のインスリンが体内で分泌されるようになる。しかし、クロミウムが不足していると、筋肉細胞内(筋線維中)のレセプターが作動しないため、どれだけたくさんのインスリンが分泌されても、インスリンの持つアナボリックな作用は得られないのである。それどころか、クロミウム不足の環境下でインスリンの分泌レベルが高いまま維持されると、インスリンがもたらす“脂肪細胞への脂肪の貯蔵”作用は保たれてしまうため、いいことは何もないのだ。
 例えば、普段の食事で十分なクロミウムが摂取できていない人の場合、インスリンの感受性が鈍くなり、インスリンの分泌量が高まってしまう。つまり、インスリンの分泌量の増加に伴って脂肪の貯蔵が促進されてしまうのである。ボディビルダーにとってこれは一大事だ。
 さらに、アナボリックホルモンでもあるインスリンはクロミウム不足の環境下ではその働きを十分行なうことはできない。クロミウムが十分補給されていると、筋中のインスリン・レセプターが作動し、インスリンの持つアナボリック作用が得られやすい状況が作られるのである。
 クロミウム賛成派の人々によれば、クロミウム・サプリメントを適量摂取しておくことは、特にアスリートたちには重要なことであるということだ。というのも、運動を行なっているような人たちは、すぐにエネルギーになる高グリセミック指数の炭水化物を摂取することが多く、身体の中ですぐに糖になるタイプの炭水化物は血糖値を上昇させ、インスリンの分泌を促進させる。この時点でクロミウムが十分補給されていれば、インスリンが持つアナボリック作用は得やすくなるのである。また、インスリンの分泌が促進されるたびにクロミウムは少しずつ身体から排出されており、したがって、常日頃からクロミウムを補うように心がけることが重要なのだそうだ。
 クロミウム・サプリメントが体組成に変化をもたらしたり、脂肪の減量に役立つかどうかを調べるために行なわれた数々の実験を振り返った最近の研究によると、ほとんどの実験で用いられた200マイクログラムのクロミウム量はクロミウムが持つとされるそれらの作用を得るには少なすぎる量であるということだ。つまり、クロミウムがもたらすとされる脂肪の減量、筋量の増加作用を得るためには、もっとたくさんの量を摂取することが必要なのだそうだ。さらに、実験が行なわれた期間も短すぎて、最低でも24週間は続けることが必要だということだ。
 クロミウムがもたらす作用を得るためには、長期間、しかも毎日400マイクログラム以上の摂取が必要になることが考えられるわけだが、一方で、クロミウムの毒性について調べられた実験も行なわれている。公表された試験管内での実験によると、クロミウムは染色体にダメージ与えるという結果が得られたそうだ。この実験ではハムスターの細胞が用いられ、その細胞を人に勧められる摂取量(200マイクログラム)の約3千倍に相当するクロミウムに浸したところ、細胞内の染色体にダメージを起こし、それがガンに発展することが指摘されている。ただし、この実験は試験管内で行なわれたという点、また、細胞がさらされるクロミウム量が非現実的な量であったという点で、必ずしもクロミウムの摂取がそのような危険をもたらすとは言い難い。
 普段の食事中に含まれるクロミウムは非常に微量であり、わずか0.5〜2%程度のクロミウムしか体内で吸収されないことを考えれば、そのようなことが起きる可能性はほとんど皆無であるということも言えるはずだ。さらに、単糖類をよく食べる人では、インスリンの分泌活動が激しく、インスリンの分泌量が増えるとクロミウムのレベルが低下することもわかっているため、現実的にクロミウムの滞留が起きることは滅多にないことであると考えられる。したがって、クロミウムの摂りすぎを心配するよりも、クロミウムの欠乏を予防することが重要であると考えられ、そのためにビタミンC、ナイアシン、アミノ酸といったミネラルの吸収を助ける栄養物質の摂取を心がけることが大切であり、できるだけミネラルの吸収を妨害するような物質をコントロールすることが重要なのだ(例えば亜鉛の摂りすぎ、高脂肪食、低タンパク質食などを摂っている人ではミネラルの吸収率が低下する危険性がある)。
 ミネラルのバランスがいい食事を続けている場合であっても、食物中に含まれるクロミウムは微量であり、男性では平均すると約33マイクログラム、女性ではわずかに25マイクログラムしか摂取できていないことがわかっている。その上、運動を行なったり、たくさん炭水化物を摂取したりすれば、それだけクロミウムの消費量は多くなり、クロミウム不足に陥ることは十分に考えられる。特に男性と女性ボディビルダーを被験者にした実験では、彼らの平均的なクロミウム摂取量は非常に低かった。クロミウムをはじめとする複数のミネラルが含まれているブロッコリー、ナッツ、レバー、プルーン、卵黄、マッシュルーム、ワイン、チーズなどを食べる習慣がないという人で、特に定期的に運動を行なっているという諸君らは、これらのことを考えると、なおさら毎日クロミウム・サプリメントを利用することが勧められる。■

クロミウムのご注文はこちらから....