プロホルモンの利点と問題点
 プロホルモンが市場に出回るようになって久しいが、その作用については諸君らも既に多くのことを知っているはずだ。それらの情報は生の経験からくるものであったり、科学的に研究された実験結果からくるものであったりする。ボディビルダーやアスリートたちの多くは、これほどまでにプロホルモンの人気が高まる前からその存在を知っていたわけだが、特にプロホルモンの人気が沸騰したのは、大リーガーのマーク・マグワイアーがプロホルモンのひとつであるアンドロステンジオンをロッカーに置いていたことが発表されてからだ。こうしてアンドロステンジオンはたちまち脚光を浴びたわけだが、やがてその物質がもたらす副作用について騒がれるようになってしまった。否定的な見解は肯定的な作用をかき消すほどの大きさで報道され、プロホルモンの賛否が問われるようになった。中にはバカバカしいような主張もあるが、多くは事実をもとにした主張である。
 実際のところ、確かにボディビルダーやその他のアスリートたちはプロホルモンを利用し、その効果を得ている。プロホルモンを利用することで彼らの体内のテストステロンレベルは向上したのだから。しかし、同時に望まない副産物のレベルまでもが高まってしまったのだ。その代表的なものがエストロゲンやジヒドロテストステロンである。アンドロステンジオンは、研究によれば、確かにエストロゲンを構成するエストロンという物質に直接変換される性質がある。したがって、テストステロンのレベルを上げるためにアンドロステンジオンを利用することは、女性化乳房を覚悟しない限り、続けることはできないのだ。
 また、プロホルモンを利用することで、アナボリックステロイドを検出するためのドラッグテストに引っかかってしまうというケースも出ているようだ。アンドロステンジオンを摂取すると体内のテストステロン値が高まるため、テストステロンとエピテストステロンの比率が正常な範囲を超えてしまう可能性があるという点だ。オリンピックやNFLなどではテストステロンとエピテストステロンの比率が6:1である限りは陰性であり、それを超えたものを陽性と判断している。
 さらに、これらのプロホルモンはサイクルを組んで摂取することが必要で、長期間にわたって継続的に摂取することは副作用の程度を悪化させたり、体内で自然に合成されるテストステロンのレベルを抑制してしまったりすることもあるのだ。ちょうど薬物のステロイドを使っている人たちが経験するのと非常に似た作用が起きるのだ。このような状況が起きてしまうと、ステロイドを使っている人たちがサイクル終了時にするように、ヒトコリオニック・ゴナドトロピン・ホルモン(HCG)を投与して体内でテストステロンを作る機能を再び呼び起こさなくてはならなくなる。
 ところで、どうしてみんなこれほどまでにテストステロンのレベルを高めようとするのか。まず第一に、テストステロンは筋肉を作るということにおいて非常に大きな影響をもたらすホルモンであるということ。これについてはアスリートも科学者たちも何年も前から知っていたはずだ。しかも、テストステロンのレベルが高まると、筋肉が作られるだけでなく、性行動が改善されたり、加齢による様々な老化現象が抑制されたり、気分を高めたりする作用までもがあるというのである。通常、平均的な男性の場合、テストステロンのレベルは血液1デシリットル当たり300〜1千ナノグラム(10億分の1g)である。
 私たちの体内で作られるテストステロンは、普段、性ホルモン結合グロブリンと呼ばれる物質と結合した形で体内を浮遊している。そして、このようなその他の物質と結合しているテストステロンは本来テストステロンが持つ作用を発揮しない“不活性テストステロン”なのだ。筋肉を発達させるために私たちが望むことは、フリーテストステロンのレベルを高めることである。フリーテストステロンこそ、テストステロンの作用を発揮する活性物質なのだから。
 しかし、諸君らの中にはどうしてもプロホルモンを利用することに抵抗を感じているという人も少なくないだろう。もっと安全に、もっと身体の機能を高めることでテストステロンの分泌量を高めることはできないのだろうか。もし、テストステロンの分泌量を増やすような栄養物質が存在していて、それが医学的な研究でも証明されているのだとしたら!
テストステロンレベルを高める物質
●トリブラス・テレストリス
 まず第一にテストステロンの体内合成力を高めてくれる物質で、既にこの成分を含むサプリメントは市場にも数多く紹介されている。その物質とはトリブラス・テレストリスである。トリブラスはインドのアユールベダ医学の中で用いられてきたハーブだ。トリブラスは体内に入ると脳下垂体を刺激して黄体ホルモンの形成を促し、それがテストステロンの製造を刺激するのである。つまり、トリブラスは身体に備わっているテストステロン合成機能をフルに活用しているわけである。複数の医学的な研究でも、トリブラスによって黄体ホルモンやフリーテストステロンのレベルが明らかに上昇したという結果が得られている(健康な被験者を用いた実験でこれらのホルモンが40〜70%上昇したという実験結果)。
 ブルガリアでもトリブラスを用いた実験が行なわれている。この実験では、インポテンツに悩む被験者200名にトリブラスを摂取してもらったところ、被験者のテストステロンや黄体ホルモンのレベルが上昇し、精子の製造が明らかに増えたという結果が得られている。ちなみに、インポテンツの主な原因はテストステロンレベルの低下である。また、この実験でトリブラスによる副作用は見られず、実験は安全に遂行されたということだ。
 医学の世界では、化学物質の急性毒性を調べる検査も行なわれる。この検査によって、どれくらいその物質を摂取したら死に至るのかを、マウスを使って調べるのだ。複数のマウスに物質を投与し、死亡率を測定し、それで得られた数値はLD50で表わされるわけだが、トリブラスのLD50の数値は体重1kgあたり10g以上という結果だった。つまり、体重が80kgの人であれば、トリブラス800gが致死量に相当するわけだ。
 トリブラスの活性成分であるフロスタノールサポニンやプロトジオシンはアナボリック作用や性欲亢進作用をもたらす。1日に750〜1千5百mg程度の量を何回かに分けて摂取することでこれらの作用が得られるはずだ。

●ムイラプアマ
 ムイラプアマもまたハーブであり、原産国はブラジルだ。元々ブラジルではこのハーブを性欲亢進、あるいは精神集中のために長い間利用してきたのだ。パリのセックスオロジー・インスティチュートで、ジャックス・ウェインバーグ博士の指揮のもとで行なわれた実験によれば、262名のインポテンツ、もしくは性欲低下の患者にムイラプアマを摂取させたところ、被験者の症状の改善が見られるという結果が得られたそうだ。ちなみに、ウェインバーグ博士は世界的にも知られている性的不能症を研究する第一人者である。その博士が今回の実験を行なったわけだが、残念ながら、ムイラプアマが体内でどのような経路を通り、どのようにそれぞれの器官に作用するのかはまだ解明されていない。しかし、患者の症状が緩和されたということは、やはりムイラプアマには体内のテストステロンレベルを増加させるか、あるいは酸化窒素のレベルを改善させるといった作用があると考えることができる。ちなみに、酸化窒素のレベルが改善されると勃起機能が高まると言われている。
 1985年にアメリカのCRC出版社が発行した『ハンドブック・オブ・メディシナルハーブ』の中で、ジェームス・デュークもムイラプアマの性欲亢進作用や勃起不全の改善効果について述べている。もちろん、先にも述べたとおり、ムイラプアマの体内におけるメカニズムについては明確にされていないため、テストステロンの分泌量が増えるかどうかについては推測の域を脱し得ないが、それでも、天然のバイアグラとしての使い方ができるハーブであることは十分期待できるのである。

●ZMA
 ビタミンB6とミネラルの亜鉛とマグネシウムを混合した物質をZMAと呼ぶが、この3つの成分はテストステロン分泌の増加に非常に重要な物質である。ZMAに含まれる亜鉛はアスパラギン酸にくるまれた形のもの(亜鉛アスパラギン酸)とメチオニンでくるまれた形のもの(亜鉛モノLメチオニン)とで構成されている。そして、この形のものだからこそ、体内に取り込まれたときの生物学的利用率が高いのである。というのも、通常ミネラルは身体に入るとアミノ酸と結合して腸壁を通過し、血液に溶け込む。ところが、ミネラルを摂取してもアミノ酸が十分体内に存在していないと、ミネラル同士で少ないアミノ酸を奪い合うことになり、アミノ酸と結合できなかったミネラルはそのまま身体の外に排泄されてしまうのだ。したがって、あらかじめアミノ酸に包まれているキーレイトタイプの亜鉛はアミノ酸奪取の戦いに参加する必要がなく、そのまま腸壁を通過し、血中に溶け込むことができるのである。だから、この形の亜鉛は体内での生物学的利用率が高いわけだ。ZMAのマグネシウムもまた、亜鉛と同じようにアスパラギン酸に包まれているため、アスパラギン酸に包まれている亜鉛と、マグネシウムがさらに結合して体内に吸収されるのだ。つまり、ただの亜鉛とただのマグネシウムをそれぞれ単独で摂る以上の作用が期待できるわけである。
 ZMAはバルコラブス社と取締役のビクター・コンテ氏によって開発・製造された。ビクター・コンテ氏はミネラルや微量元素について15年間もの研究を続けてきた人物である。バルコラブス社では完成したZMAがストレングス・アスリートたちにどのようなプラスの作用をもたらすかを調べる実験を行なっている。実験の結果、ZMAを摂取したアスリートたちの体内フリーテストステロンのレベルが30%上昇したのである。人によっては、自社で開発した物質の実験を自社で行なったのだから、実験自体を疑うという人もいるだろうが、実際にこの実験結果については『スポーツメディスン、トレーニング&リハビリテーション・ジャーナル』誌に受け入れられ、掲載されているのである。発表された記事にはZMAを夜のサプリメント(性欲亢進の作用があるサプリメント)と合わせて摂ると、力もパワーも漲るという結論が出されていた。
 なお、参考までに述べておくと、ZMAは現在世界級のアスリートたち、NFLで優勝したデンバー・ブロンクスのチームでも利用されている。
 ところで、それほどまでZMAがいいのであれば、いったいどのようにして競技能力を高めたり、テストステロン値を高めたりしているのだろうか。亜鉛は成長ホルモン、インスリン、テストステロン、エストロゲンを含む数々のホルモンの製造に欠かせない重要な鍵を握る成分だ。しかも、亜鉛は体内で様々な反応を起こすために活躍する200種類もの酵素を活性させる役割をも担っているのだ。ただし、それほどまでに重要なのに、非常に貯蔵量が少ないミネラルである。その上、研究によれば、運動を行なっている人たちはよりたくさんの亜鉛を必要としており、それが十分認識されていないためか、運動を行なっている人で亜鉛不足に陥っている人が数多くいるのだそうだ。
 亜鉛のテストステロン製造に与える影響については、1996年の“健康な成人の体内で起きる亜鉛のテストステロンレベルに与える影響”という実験で明らかにされた。この実験はアナンダ・プラサド博士によって行なわれたもので、実験については『ジャーナル・ニュートリション』で紹介された。発表された実験報告書によれば、被験者に毎日30mgの亜鉛を摂取してもらったところ、被験者の体内テストステロンのレベルが実験前に比べて2倍にまで増加したのだそうだ。なお、被験者は実験前までの6ヵ月間、やや亜鉛不足に陥っていたらしい。つまり、亜鉛が不足していた状態から比べ、十分な亜鉛が取り込まれた途端に体内のテストステロンレベルが高まったわけだ。亜鉛は間違いなくテストステロン・ブースターであると言える。
 また、複数の実験で示されていることだが、亜鉛には成長ホルモンやインスリン様成長因子(IGF−1)のレベルにまで影響を与え、その上、亜鉛は抗酸化作用を持っているため、身体の免疫機能を改善したりすることもできるのである。
 運動を行なっている人がどうして亜鉛不足に陥りやすいのか。それは、運動によって亜鉛などのミネラルが汗などで身体の外に多量に流れ出てしまうためだ。また、亜鉛をカルシウム、胴、フィチン(様々な穀類やシリアルなどに含まれる成分)などと組み合わせて摂取したりすると、亜鉛の吸収が妨げられてしまう。
 亜鉛を効率よく摂取するのであれば、空腹時に摂ること。あるいは夜寝る前でもいい。人によってはマルチビタミンやマルチミネラルをきちんと摂っているかもしれないが、トレーニングを行なっているのであれば、それだけで十分な亜鉛が補給できているとは言えないのだ。また、マルチミネラルは亜鉛以外のミネラルを同時に摂取することになるため、組み合わせによっては吸収が妨げられてしまうこともあるので注意が必要だ。
 マグネシウムもまた非常に重要なミネラルである。体内で300以上もの酵素の働きに影響し、糖新生、クレブス回路、クレアチンリン酸の形成、核酸の合成、アミノ酸の活性、平滑筋の筋収縮、環状アデノシン一リン酸の形成、そしてタンパク質の合成などに作用しているのだ。
 そんな役割を保つマグネシウムは特にアスリートにとって重要なミネラルだ。しかし、カルシウムやリン酸と一緒に摂取してしまうとマグネシウムの吸収が妨げられてしまうため、亜鉛と同じように、組み合わせには十分な注意が必要だ。
 マグネシウムがアスリートにとって特に重要なわけは、マグネシウムがクレアチンキナーゼという酵素の働きを助けるためだ。クレアチンキナーゼはクレアチンをリン酸と結びつけてクレアチンリン酸に変換するために用いられる。したがって、マグネシウムが十分に吸収されていれば、クレアチンリン酸の量を増やすことができるのである。ちなみに、クレアチンリン酸とは、体内でクレアチンが貯蔵されるときの形だ。クレアチンリン酸の形になっていないと、体内で貯蔵することができないのである。したがって、いかにマグネシウムが重要であるか、ご理解いただけるのではないだろうか。
 実際のところ、クレアチン・モノハイドレートを利用しているアスリートは多い。しかし、もしアスリートの体内に十分なマグネシウムがなければ、せっかくクレアチン・モノハイドレートのサプリメントを摂取しても、それを効率よく利用することができなくなってしまうのだ。クレアチン・サプリメントを利用しているのであれば、マグネシウムの摂取も十分心がけていただきたい。
 さて、アスリートにとってマグネシウムが重要なわけはもうひとつある。それはタンパク質の合成だ。私たちは、普段の食事やサプリメントのプロティンを利用しながら十分なタンパク質を身体に取り込んでいる。体内に入ったタンパク質は、アミノ酸の形にまで分解されるのだが、筋中に同化される際、再びタンパク質の形になるのだ。その時にマグネシウムが必要になるわけだ。つまり、タンパク質がどれだけ合成されるかはその人の体内のマグネシウム濃度によるということである。当然、マグネシウムレベルが低い人では、タンパク質の同化がうまく行なわれず、理想的なワークアウトを行なっているにもかかわらず、筋力・筋量の伸び悩みが起きてしまう可能性が高いのである。
 運動を終えると、マグネシウムのレベルはどんどん低下していく。そのまま放置しておけば、アスリートは間違いなくマグネシウム欠乏症に陥る。1992年に行なわれた実験では、マグネシウム・サプリメントをトレーニング経験のない26名の被験者たちに7週間にわたって摂取してもらった。この実験では、信頼性の高い二重盲験法が採用された。この実験は“ヒトの筋力トレーニングにマグネシウム・サプリメントが与える影響”と題され、『ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・カレッジ・オブ・ニュートリション』誌に発表された。実験の結果、マグネシウム・サプリメントを経口摂取した被験者たちでは、摂取しなかったグループに比べて、明らかに筋力の向上率が高かったのである。
 それ以外の実験でも、筋力トレーニングを行なうと血清マグネシウムのレベルが低下することがわかっている。また、大腿四頭筋の最大収縮は明らかに血清マグネシウムのレベルによって影響を受けることがこの実験結果から示唆されていた。
 ZMAの最後の成分はビタミンB6だ。ビタミンB6はピリドキシンとも言われており、タンパク質の同化に非常に大きな影響をもたらす。ビタミンB6は特定の補酵素を構成している重要な要素なのだが、このビタミンは無数の酵素と密接に関係しているのである。そして、その多くがビタミンB6と共にアミノ酸の代謝に欠かせない要素として働いているのだ。これらの酵素はグリコーゲンのカタボリズムにも関係しており、エネルギーになる炭水化物を制限せずに使用したり、コルチゾールのような異化分解のホルモンの作用を緩和したりしてくれるのだ。
ナチュラル・テストステロン・ブースター
 これらの成分を含むサプリメントであれば、体内で合成されるテストステロンの量をきっと高めることができるはずだ。テストステロンのレベルだけでなく、競技能力や筋力の向上を期待することもできるのだ。
 より安全にテストステロンのレベルを高めたいと望んでいるなら、この3つの成分(トリブラス・テレストリス、ムイラプアマ、ZMA)を過不足なく摂取してみるといい。ただし、3つの成分が既に混合されているサプリメントをお望みなのであれば、マッスルリンク社の『ZMA-T』がある。『ZMA-T』にはここで紹介したトリブラス、ムイラプアマ、ZMAを全て含んでいる。興味のある方は試してみるといい。
[Back]