重量の増加は適切か!?
小さく増やす“マイクロローディング”
重量増加は適切か?  

  ジムトレーニーもホームトレーニーも、もっと小さい幅で重量増加させたいと思ったことはないだろうか。一般的なジムに設置されている最小プレートは1.25kgである。ショップや通信販売でも基本的には1.25kgプレートが最も小さい。しかし、プレートというものは1枚ずつをバーの両側に付けてはじめてトレーニングすることができるようになっているのは言うまでもないことだろう。つまり両側合わせて2.5kgの増加ということだ。強い力を発揮する脚の筋肉を使う「スクワット」と、前腕の屈曲筋しか使わない「リストカール」を比較してみてほしい。この二つの種目が同じ2.5kg刻みでしか重量が増やせないというのは元来おかしなことなのではないか?
 筋肉の発達の原則は“漸増負荷”である。つまり、向上に合わせて少しずつ負荷を増やしていくことが、発達の継続につながるわけだ。しかし、どんな部位に対しても2.5kg刻みでしか増やしていけないとするならば、小筋群に対しては明らかに実力以上の重量増加になってしまう可能性がある。その結果、伸びが停滞したり落ち込んだり、悪いときにはケガを負うこともある。今述べているのはバーベルについてだが、ダンベルになれば状況はさらに悪くなる。特にホームトレーニーにとっては最悪の事態だ。フリーウェイトがズラリと揃っているジムなら1kg刻みのセットダンベルがあるのは当然だ。しかし、ホームトレーニーが10kgのダンベルセットでなんとか必死の思いで10レップスのダンベルカールができるようになったとしよう。重量を増やすとなれば、ダンベルバーの両側に1.25kgプレートを加えて一気に2.5kgアップ、合計12.5kgの重量になってしまう。しかも片腕だけで2.5kgの重量増加である。両腕なら一気に5kgアップということになる。当然ながら、できるレップス数も一気に落ちてしまうだろう。
「使用重量は徐々に増やしていくこと」「自分の向上に合わせて増やしていくこと」が大切であることは多くのトレーニーが知っている。しかし、それができない環境もある。それができなければ確実な発達は望めないのである。
 今度はもっと上級者を例にとって心理的な面から考えてみよう。上級者にとっても実際のところ2.5kg刻みの増加というのはかなりの負担なのだ。例えば、160kgのベンチプレスが震えながらもなんとか1レップできるトレーニーが、162.5kgに挑戦してみろと言われると大きな不安に襲われてパニックに陥ってしまうのだそうだ。このような不安感が、本来持っているリフティング・テクニックに悪影響をおよぼし、それでも意地で挑戦すれば、ケガをしたり失敗したりして、ますます162.5kgに対する苦手意識を強くしてしまう。必要なのは160kgから一気に162.5kgに増やして挑戦することではなく、その間にもう1、2段のステップを入れることである。小さく増やしていくことができれば、私たちはできるだけ壁にぶち当たらずに、確実に前進していくことができるはずなのだ。
 マイクロローディング、つまり“小さく増やす”という考え方から生まれた『プレートメイト』はマグネットを利用した小さなウェイトプレートだ。バーベルにはもちろん、ダンベルにも簡単に取り付けることができ、1つがわずか550gの重量しかない。したがって、バーベルを使う場合は左右にそれぞれ1枚ずつ使い、1.1kgの増加が可能になるし、ダンベルでは左右のダンベルの両端に1枚ずつ(1.1kg増)、合計4枚を使って2.2kgの増加が可能になるのだ。プレートメイトを製造・販売しているケン・ベノイト氏は自らのケガによってマイクロローディングのアイデアを製品化することに成功した。その頃、ベノイト氏は肩のローテーターカフ筋を痛め、リハビリに専念しようとしていた。
しかし、痛めたローテーターカフ筋のリハビリにはこれまでの重量増加幅はあまりにも大きく、無謀に思えたのである。簡単に取り付けられて、しかも小さい重量増加幅で・・・。『プレートメイト』はベノイト氏の“必要”から生まれたのである。

小さく増やす
“マイクロローディング”
 

 マイクロローディングは、心理的にも肉体的にも負担になりすぎない量で負荷を増やしていくための方法だ。特に初心者や女性のトレーニーにとって現在の一般的な重量増加幅は明らかに大きすぎる。そういう人たちは、重量を増やせないため、負荷を増やす別の手段としてレップス数を多くしたり、エクササイズを変えてみたり、強度を高めるようなトレーニング法を取り入れたりするのである。しかし、そのようなやり方では実際に増やした負荷量を測定することができず、そのためにトレーニング意欲を低下させてしまうこともよくあるのだ。マイクロローディングできるような重量があれば、何の問題もないのである。
 ウェイトリフティングは、女性でも大会に出られるようになったのだが、彼女たちが初めてウェイトリフティングの世界に入ってきたとき、規則では第1試技と第2試技の重量差は最低でも10ポンド(約4.5kg)と定められていた。しかし、もし女性が第1試技で100ポンド(約45kg)に成功した場合、次の試技では110ポンド(約49.5kg)に挑戦しなくてはならないことになり、最初の試技に比べて10%も重い重量を成功させることは技術的な観点からいうと非常に難しいのだ。男性においても、第1試技で300ポンド(約136kg)を成功させた選手が第2試技で10%重い330ポンド(約149.7kg)を成功させられかどうかを考えた場合、非常に難しいということが理解できるはずだ。そういったことを考慮して、ウェイトリフティングの世界では、重量の最低増加幅を5.5ポンド(2.5kg)に修正した。
 これは女性リフターの問題だけにとどまらない。私がアメリカの米空軍アカデミーで筋力コーチを務めていたとき、生徒の中に100kgのベンチプレスが行なえる水泳の選手がいた。しかし、彼はローテーターカフ筋の種目でわずか4kgしか扱うことができず、それをどうにかして7kgにまで増やすために、パートナーと組ませ、そのパートナーに4kgのウェイトに負荷をかけてもらいトレーニングを続けさせるしかなかったのだ。
 小さい筋群は特にそうだが、ケガをしたあとのリハビリにも重量の増加幅はできるだけ小さくなくてはならない。リハビリセンターなどに行くと、必ずそこで開発された重量幅を小さく設定した器具が設置されていたり、販売されていたりする。米空軍アカデミーでもローテーターカフ筋を鍛えるためのマシンを開発したが、そのマシンにはアルミ製の軽いプレートが取り付けられていて、重量の増加幅を細かく設定できるような工夫がされていた。
 マイクロローディングの重要性については既に誰もが認めていることなのだ。しかし、それを実際に活用することがこれまではできなかった。マグネット式の『プレートメイト』は、滑り止めの粉やグローブ、サポーターなどと同じように本格的にトレーニングを行なう人にとって非常に有効で利用価値のある道具なのである。利用価値がある道具というのは、確実に重量を伸ばし、ケガを防ぎ、トレーニング意欲を高い状態で維持し続けることができる道具のことである。そして、それは本格的な男性トレーニーのみならず、初心者や女性、あるいは軽い重量しか扱えない人、リハビリのためにトレーニングをしている人にとっても価値のある道具のことなのだ。(by Kim Goss)■
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